木曜日なので太郎が屋根の塗装をやりに来た。母江をピックアップする案もあったようだが、姫夫夫妻宅には寄らずに来た。
この数日でいくつか思い立ったことがあったので太郎と少し会話をした。
認知症が少しづつ進んでいる母江に対して、成年後見人を立てたほうが良いのではないかと姫夫に言われた。しかしそれよりも家族信託という制度のほうが良いような気がする。太郎もこの家族信託といる制度があまりよくわかっていなかったのでもう少しよく調べてみたい。
もう一点は姫夫は姫子からの情報がほとんどのため、先日電話で話したことは姫子の意見でもあると思う。姫夫が言うには今まで長男から順に親から貰った額が少なくなっている。
太郎は父男の言いなりで蕎麦屋になり、バブルの絶頂期に父男の強制で店を持った。そして親の強制で2度結婚して2度離婚した。3度目の結婚は自分で決めたのでうまくいったが、蕎麦屋の経営がうまくいかない時は母江に金の無心をした。
次郎は実家の火事の後始末をしている時に親から贈与を受けて、郊外に家を購入して、娘の学費援助を受けた。
三郎はコツコツ働いた金をかつて親が儲けたように不動産投資に強制され、バブルが弾けて負動産が残った。その後始末を親に投げ出して、国外に行ってしまった。
姫子は結婚資金くらいしかいただいていない。だから今回の相続くらいは公平にしたい。
と言うのが姫夫妻の言い分だが、男兄弟3人は幼少より父男の強制を受けていた。太郎は従順、次郎は反発、三郎はかわせる範囲でかわした。そして妹はプリンセスだった。
この姫子の言い分を少しでも崩すにはどうするか?三郎の持っている父男からの4分の1の相続分を太郎に贈与してしまえば良い。三郎の生活の基盤はNZにあり、面倒な日本の兄妹との共同不動産など、煩わしいだけだ。ただこれをすると太郎が贈与税を払わなければならない。だが、預貯金遺産も太郎から三郎へ支払っている借金返済も含めれば、十分すぎるお釣りがくるはずだ。
すぐには決められないと太郎は言った。太郎は優柔不断なのだ。もっともこれは優柔不断でなくてもすぐには決められない事なのはわかる。