昨晩から降り続いていたが、日課のファミレスに行くかどうか尋ねると、「行くよ」とのことで、カッパを着て出かけた。
「今の練馬の家があるのはおばあちゃん(父男の養母、父男の父の妹)が中野の鍋屋横丁の2軒の家を売ったおかげだよ」
「子供の頃、父男は『自分で稼いだ金でこの家を買った』って言っていたけど、とんでもない大嘘だね」
「あのおばあちゃんはやり手でねえ、戦争さえなければ10軒くらい家を持っていたんだよ」
「私は兄姉と父を亡くして、一人でおばあちゃん(母江の母)の面倒見ながら伊勢丹で働いていていたけど、父男と結婚の条件がおばあちゃんの面倒を見てくれるだった」
「それで、伊勢丹には他にもいい男がたくさんいたけど、運悪く父男と結婚したんだ」
父男は今で言えば、発達障害の見本のような人で小学校しか出ていない。
「向こうのおばあちゃんは私が伊勢丹に勤めていたから頭がいいと思ったんだねえ」
「学生の頃、卓球の北関東大会の決勝までいったのを見込まれただけなのにね。それでも商売の才能があったから、手芸店は儲かったんだよね」
「そうだねえ、あの頃は何を売っても売れたんだよ」
「だから父男はあちこち旅行にも行って、道楽で家の中や庭に池を作ったりして、好き勝手に生きたんだね」
「本当に好き勝手に生きたよ。塗装の仕事に飽きたって言って喫茶店やって、喫茶店にも大きな水槽を入れてそれもすぐに飽きて辞めちゃったし」
「散々人に文句ばかり言って、最後は『俺は幸せだ』って言って死んじまったんだから、いい人生だよ」
「ほんとうだ」