午前中洗濯物を干していると、見慣れた顔の来客があった。30年前に働いていた蕎麦屋の奥さんだった。太郎も同じ店で修行をしていたが、太郎が最初の結婚で独立して、3ヶ月後に離婚したので、太郎の店を手伝う羽目になり辞めることになったのだった。
もちろん母江とも顔見知りで、わざわざ会いにきてくれた。今日こちらに来ることは太郎に言ってあり、太郎からこちらに連絡することになっていたらしい。
昨日の段階で母江がディサービスに行くことになっていたことはこちらからは連絡をしていたのに、太郎からは来客があることは伝わっていない。
母江はいないが客間に通すと、すぐに後からもう一人母江の友達を連れてきてくれた。こんなことならディサービスを頼まなければよかったが、連絡がうまくいっていないのだから仕方がない。
奥さんはiPhoneを使っていたのでAirDropで三郎の電話番号を転送すると、
「あら、早いわね〜」と感心していた。
いくら携帯電話が進化しても使い手がその進化に追いついていけないのだ。たいていの高齢者はスマホを持っていても使い方はガラケーで止まっているのではないだろうか。
母江は今ではガラケーから固定電話に退化してしまって、スマホを持っていても固定電話からしか電話をかけれなくなってしまった。