午前中に弁護士へ手紙を書いていると、退屈になった母江が買い物に行くと言い出した。今日は荻窪のようだ。仕方なく手紙は諦めて買い物に付き合った。
まずはお気に入りの本屋に言って物色をした。最初に選んだ物はNHK出版の「すてきにハンドメイド」の５月号だったが、その雑誌は購読手続きをしていて毎月送られてくることになっている。４月号も買いそうになったのを止めたのにまた５月号を買おうとしていた。
代わりに別の編み物の本を買った。
本屋と同じ階の手芸店が閉店セールになっていた。子供を連れたお母さんが「ここが無くなると困るわね」と言っていた。自分で作る楽しみを知っている人は手芸店がないと困るが、今は作るより安く買えてしまうのでこういう店は流行らないのだろう。
母は同じ色の毛糸を10個買った。
「何を作るの？」と訊くと「セーター」と答えた。
「どのくらいでできるの？」
「3、４日くらいかねえ」
お昼が近くなったのでまたサイゼリアで食事して帰ろう、ということになったが、土曜日ということでこの間より混んでいた。サイゼリアはやめて地上へ下りた。
王将で母江の好物の餃子にしようとしたが、その前にてんやが目に入った。外から覗くとテーブル席の空きがあったので入った。
「何を食べる？」と訊くと「同じものでいい」と言うので、
具沢山のオールスター天丼の大盛りと並を頼んだ。
並と言ってもかなりのボリュームがあった。
総入れ歯なので、硬くてレンコンはひとかじりで諦めたがあとは完食した。
「よく食べるねえ」と感心すると、
「ガソリン入れなきゃあ走らないんだよ」と言った。
すごい９２歳のお婆さんだ。
