2022年3月に亡くなった親父は変った人だった。大雑把に言えば、昭和の頑固オヤジだが、それだけではない。
昭和一桁生まれで小学校しかでていない。長い間、第二次大戦で学校に行けなくなったのかと思っていたが、ただ勉強が嫌いだったようだ。今でいえば不登校というやつだろう。
塗装の仕事の丁稚奉公で生計を立てた。酒は下戸で、博打もしない、というより、博打をする頭がなかったのかもしれないが、仕事はまじめにしていたようだ。ただ喧嘩早く、それもいきなりキレる人だった。
この親父の親父、つまり私の祖父もその気があり、駅構内でこうもり傘で人を刺し、警察沙汰になったことがあるらしい。
父は普段は腰が低く人に接するので、よく父のことを知らない人ほど、「優しい良い人」というイメージを持っている。
そんな父の親方が住んでいたアパートに母が越してきたのが運の尽きで、親方の仲人で結婚することになった。